宝生能楽堂
- 住 所
- 文京区本郷1-5-9
- 電 話
- 03-3811-4843
- アクセス
- 都営三田線「水道橋駅」下車 徒歩1分
JR「水道橋駅」下車 徒歩3分
- ホームページ
- 詳細はホームページよりご確認ください
http://www.hosho.or.jp/
JR水道橋駅から白山通りを春日方面へ歩き、東京ドームを背にして脇道を入って行くと、れんが造りの端正な会館が現れます。室町時代に始まった能の名門、宝生流の能楽堂「宝生能楽堂」です。
とっつきにくい伝統芸能と思われがちな能楽ですが、日本人の生き方や感情、神仏の教えを含んだ世界観は日本人にこそ馴染みやすく身近で、陰影深い物語性はとても興味深いものです。今回はその能楽を担う能楽師や能舞台に触れつつ、宝生能楽堂(宝生会)についてご紹介したいと思います。
能は舞・謡(うたい/声楽)・囃子の三要素から成り立っており、能楽師によって歌舞や伴奏音楽などの役割が分担されています。
その役割とは、
- 主人公(主に神や亡霊、天狗、鬼など超自然的な存在)を演じることが多い「シテ方」
- シテ方の思いを聞き出す役割(主に僧侶)を担う「ワキ方」
- 主に中入りのときに、能の物語にまつわる古伝承や来歴を語る「狂言方」
- 伴奏の音楽を担当する「囃子方(笛方、小鼓方、大鼓方、太鼓方)」
に分かれます。
宝生流ではシテ方とワキ方の能楽師が所属しており、とくにシテ方の魅力のある謡の特長から「謡宝生(うたいほうしょう)」とも呼ばれています。
宝生能楽堂は宝生流が運営する能楽堂で、1979年(昭和54年)に落成しました。
入り口を抜けると、能舞台と客席のあるホールを囲むように待ち合いスペースが設けられており、能楽にまつわる人形や絵画が出迎えてくれます。少し奥へと進むと、客席入り口の扉の横には、能69番と狂言39番をマスに割り振って描かれた「能狂言双六」が展示され、色彩豊かなつくりで目を楽しませてくれます。さらに奥には近代の宗家の銅像が設置されており、明治期の名人として名高い宝生九郎知栄の銅像も見ることができます。
宝生能楽堂では能楽関連書籍やグッズの販売も行われています。扇子や足袋、地謡用の教本や、舞の動きを図とともに記した図解仕舞集を購入できるほか、袴の仕立てなども行っています。能を愛好する方は、ここで道具一式を揃えることもあるそうです。
能舞台と客席は、公演が行われていなかったためか不思議な静けさが漂っていました。舞台下手から橋(橋懸)が伸びている構造は能楽堂独特のもので、客席はどの場所から見ても演技を見逃すことのないつくりになっています。かつては神社等に作られ青天井であった能舞台がその後屋根を付けた名残から、室内にも関わらず屋根をあしらい四方には柱が設けられています。
宝生能楽堂では橋懸にある松に本物の松を使用しているのが特徴です。この松は上手から一の松、二の松、三の松と呼ばれ、橋懸での演技の際に場所の目印にするものです。現在は造木であることが多く、本物の松を仕入れているのはとても珍しいとのことでした。
宝生能楽堂で年間に行われる公演は30回を超えます。その内容としては、
- 主に熟練がシテを担当する定例の月並能が10回
- 主に若手がシテを担当する五雲会が11回
- 一般の方へのワークショップや解説も行う普及能が2回
- 春と秋の別会能がそれぞれ2回ずつ
- 立春能(2月)や文月能(7月)が1回ずつ
などで、このほか企画公演などが催されています。
月並能や別会能、企画公演では、現宗家である二十世宝生和英の公演を見られるだけでなく、人間国宝に認定される三川泉や紫綬褒章を受章した近藤乾之助の公演などを見ることができます。
また、かつては女人禁制であった能も現代では門戸が開かれており、立春能、文月能は女性が舞う公演です。
普及能では公演一週間前にワークショップが行われ、参加者はじかに舞台に立って地謡の体験ができるなど、積極的な普及活動も行っています。
能に触れる機会は広く開かれていると感じました。興味のある方は、能楽堂に足を運んで日本の素晴らしい伝統芸能に親しんでみてはいかがでしょうか。